風邪をひいたときの歯磨き注意点|体調不良時の正しい口腔ケア

はじめに
風邪で体調が悪い時、歯磨きが面倒になってつい省略してしまった経験はありませんか。熱や倦怠感でベッドから出るのも辛く、「今日くらいは歯磨きをしなくても大丈夫だろう」と思ってしまう気持ちはよくわかります。
しかし、実は風邪をひいている時こそ、口腔ケアが非常に重要なのです。風邪の時は口の中の環境が悪化しやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、口腔ケアを怠ると、風邪の回復が遅れたり、二次感染を起こしたりする可能性もあります。
この記事では、風邪をひいた時になぜ口腔ケアが大切なのか、そして体調が悪い時でも無理なくできる歯磨きの方法と注意点について、詳しく解説します。
風邪の時に口の中で起こっていること
口腔内環境の悪化
風邪をひくと、体の免疫力が低下します。それは口の中も同じで、通常であれば抑え込める細菌の増殖を許してしまいます。その結果、口腔内の細菌バランスが崩れ、虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌が増えやすい環境になります。
また、発熱による脱水や、鼻づまりによる口呼吸により、唾液の分泌量が減少します。唾液には口の中を洗浄し、細菌の増殖を抑える働きがありますが、その量が減ることで、さらに口腔環境が悪化してしまうのです。
薬の影響
風邪薬の多くには、抗ヒスタミン成分が含まれています。これらの成分は、唾液の分泌を抑制する副作用があり、口の中が乾燥しやすくなります。また、咳止めシロップや喉の痛みを和らげるトローチなどには糖分が含まれていることが多く、これも虫歯のリスクを高める要因となります。
解熱剤や抗生物質なども、口の中の環境に影響を与えることがあります。特に抗生物質は、口腔内の細菌叢のバランスを変化させ、カンジダ症(口腔カンジダ症)などの真菌感染を引き起こすこともあります。
食生活の変化
風邪をひくと、食欲が落ちて食事の回数や内容が変わります。消化の良い柔らかいものや、喉越しの良いゼリー、プリン、アイスクリームなど、糖分の多い食べ物を摂ることが増えがちです。また、スポーツドリンクなども頻繁に飲むようになります。
これらの食べ物や飲み物は栄養補給には役立ちますが、糖分が口の中に残りやすく、虫歯のリスクを高めます。さらに、体調不良で歯磨きがおろそかになると、虫歯菌にとって絶好の繁殖環境が整ってしまうのです。
風邪の時に口腔ケアを怠るリスク
虫歯・歯周病のリスク増加
上記の理由から、風邪の時は虫歯や歯周病になりやすい条件が揃っています。特に数日間にわたって歯磨きを怠ると、プラーク(歯垢)が蓄積し、歯茎の炎症や虫歯の進行を招きます。風邪が治った後に歯が痛くなったり、歯茎が腫れたりすることがあるのは、このためです。
風邪の長期化
口の中の細菌は、風邪のウイルスだけでなく、細菌性の二次感染を引き起こす可能性があります。口腔内が不衛生だと、細菌が喉や気管に入り込み、気管支炎や肺炎などの合併症を起こすリスクが高まります。
また、口腔内の細菌が増殖すると、体の免疫システムがそれらの細菌への対応にも追われ、風邪のウイルスと戦う力が分散してしまいます。その結果、風邪の回復が遅れる可能性があるのです。
口臭の発生
風邪で体調が悪い時は、口の中の細菌が増殖し、強い口臭が発生しやすくなります。特に朝起きた時の口臭が強くなることが多く、本人も周囲も不快な思いをすることになります。
味覚への影響
風邪をひくと味覚が鈍くなることがありますが、これは鼻づまりだけでなく、口腔内の衛生状態も影響しています。舌苔(ぜったい)という舌の表面の汚れが厚くなると、味を感じる味蕾の働きが妨げられ、食べ物の味がわかりにくくなります。
風邪の時の歯磨き方法と注意点
無理のない範囲で継続する
体調が悪い時は、完璧な歯磨きを目指す必要はありません。しかし、全く何もしないよりは、簡単でも口腔ケアを続けることが重要です。立っているのが辛い場合は、座って磨いたり、ベッドで横になりながら磨いたりしても構いません。
高熱で動けない場合は、最低限、就寝前だけでも歯を磨くようにしましょう。1日1回でも磨くことで、細菌の増殖をある程度抑えることができます。
歯ブラシの選び方と使い方
風邪の時は、体力を消耗しているため、歯磨きにも疲れやすくなります。柔らかめの歯ブラシを使用し、優しく磨くことを心がけましょう。電動歯ブラシを持っている場合は、こちらを使うと短時間で効率的に汚れを落とせるため、体力的な負担が少なくて済みます。
歯磨き粉は、刺激の少ないものを選ぶと良いでしょう。喉が痛い時は、歯磨き粉の香料やメントールが刺激になることがあるため、低刺激タイプや子ども用の歯磨き粉を使うのも一つの方法です。
うがいの活用
歯ブラシを使うのが辛い時は、うがいだけでも行いましょう。水や緑茶でうがいをするだけでも、口の中の食べかすや細菌をある程度洗い流すことができます。緑茶に含まれるカテキンには抗菌作用があるため、特におすすめです。
マウスウォッシュを使用する場合は、アルコールフリーのものを選びましょう。アルコール含有のものは、口の中をさらに乾燥させ、刺激も強いため、体調不良時には向きません。
舌のケア
風邪の時は、舌苔(舌の表面の白い汚れ)が厚くなりやすいです。舌苔には大量の細菌が含まれており、口臭や味覚障害の原因となります。体調が許せば、舌ブラシや柔らかい歯ブラシで、舌の奥から手前に向かって優しく清掃しましょう。
ただし、舌は非常にデリケートな部位なので、力を入れすぎたり、何度もこすったりしないよう注意が必要です。1日1回、軽く数回なでる程度で十分です。
水分補給の重要性
風邪の時は、発熱や発汗、鼻水などで体内の水分が失われやすくなっています。また、薬の副作用でも口が乾きやすい状態です。こまめに水分を補給することで、口の中の潤いを保ち、唾液の分泌を促すことができます。
スポーツドリンクは電解質の補給に役立ちますが、糖分が多いため、飲んだ後は水で口をすすぐか、水も飲むようにしましょう。
口腔保湿剤の使用
薬局やドラッグストアで購入できる口腔保湿ジェルやスプレーを活用するのも効果的です。特に就寝前に使用すると、睡眠中の口の乾燥を防ぎ、細菌の増殖を抑えることができます。
歯ブラシの管理
風邪のウイルスは、歯ブラシに付着して数時間から数日生存することがあります。使用後の歯ブラシはしっかり水洗いし、風通しの良い場所で乾燥させましょう。家族と歯ブラシが接触しないよう、離して保管することも大切です。
風邪が治ったら、できれば新しい歯ブラシに交換することをおすすめします。特にインフルエンザなど感染力の強い病気の後は、再感染を防ぐためにも交換したほうが安全です。
風邪の時に避けるべきこと
強すぎる歯磨き
体調が悪い時に、無理に強く長時間歯を磨くことは避けましょう。体力を消耗するだけでなく、免疫力が低下している時に歯茎を傷つけると、炎症が悪化したり、細菌感染を起こしたりするリスクがあります。
冷たすぎる水でのうがい
熱がある時に冷たすぎる水でうがいをすると、喉に刺激を与え、咳が出やすくなることがあります。常温か、ぬるま湯程度の温度の水を使用しましょう。
共用タオルの使用
風邪の時は、洗面所のタオルを家族と共用しないようにしましょう。ウイルスが付着したタオルを介して、家族に感染させてしまう可能性があります。個人用のタオルを使うか、使い捨てのペーパータオルを利用すると安心です。
回復後のケア
歯科検診の検討
風邪が長引いた場合や、数日間ほとんど歯磨きができなかった場合は、回復後に歯科検診を受けることをおすすめします。プロフェッショナルクリーニングで蓄積したプラークや歯石を除去してもらうことで、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。
口腔ケアの習慣を取り戻す
体調が回復したら、できるだけ早く通常の口腔ケア習慣を取り戻しましょう。1日3回の歯磨き、デンタルフロスや歯間ブラシの使用など、丁寧なケアを再開することが大切です。
予防が最善の策
風邪をひいた時の口腔ケアも大切ですが、何よりも風邪をひかないための予防が重要です。日頃から丁寧な口腔ケアを行うことで、口腔内の免疫力を高め、ウイルスや細菌の侵入を防ぐことができます。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、手洗い・うがいの習慣など、基本的な健康管理を心がけましょう。
まとめ
風邪をひいた時こそ、口腔ケアが重要です。体調が悪いと歯磨きを怠りがちですが、それが虫歯や歯周病のリスクを高め、風邪の回復を遅らせる可能性もあります。
完璧な歯磨きができなくても、座って磨く、うがいだけでも行う、就寝前だけは必ず磨くなど、無理のない範囲で口腔ケアを続けることが大切です。口腔保湿剤やマウスウォッシュなども活用しながら、口の中を清潔に保ちましょう。
風邪の時の適切な口腔ケアは、早期回復への近道でもあります。体調が悪い時こそ、できる範囲で口の健康を守り、一日も早い回復を目指しましょう。
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