歯医者が語る「予防歯科」の重要性:生涯自分の歯で食べるために

はじめに
「歯が痛くなったら歯医者に行く」という考え方は、もう古いかもしれません。現代の歯科医療は、「治療」から「予防」へと大きく転換しています。予防歯科とは、虫歯や歯周病になってから治療するのではなく、そもそも病気にならないように予防することを重視する考え方です。痛みや症状が出てから治療するのでは、すでに歯や歯茎にダメージが蓄積しており、元の健康な状態に完全に戻すことは困難です。一度削った歯は二度と元に戻りません。しかし、定期的なメンテナンスと正しい日常ケアにより、虫歯や歯周病を予防し、生涯にわたって自分の歯を維持することが可能になります。この記事では、歯科医師の視点から、予防歯科の重要性、具体的な内容、メリット、そして実践方法について詳しく解説します。予防歯科の考え方を理解し、今日から実践していきましょう。
予防歯科とは
予防歯科とは、虫歯や歯周病などの口腔疾患を未然に防ぐことを目的とした歯科医療の分野です。痛みや症状が出る前に、定期的に歯科医院を受診し、専門的なケアを受けるとともに、日常の正しいセルフケアを実践することで、口腔の健康を維持します。
従来の「悪くなったら治す」という対症療法ではなく、「悪くならないようにする」という予防医学の考え方に基づいています。
なぜ予防歯科が重要なのか
歯は再生しない
一度虫歯で削った歯、歯周病で溶けた骨は、元には戻りません。失った歯も、二度と生えてきません。だからこそ、病気になる前の予防が極めて重要なのです。
治療には限界がある
現代の歯科医療技術は進歩していますが、それでも天然の歯に勝るものはありません。どんなに精密な詰め物や被せ物も、天然歯には及びません。また、治療を繰り返すたびに、歯は弱くなっていきます。
生活の質への影響
歯を失うと、食事が楽しめなくなる、発音が不明瞭になる、見た目が老けるなど、生活の質が大きく低下します。健康な歯を維持することは、人生の質を維持することに直結します。
医療費の削減
予防にかかる費用は、治療費に比べてはるかに安価です。定期検診とクリーニングは保険適用で約3000円程度ですが、進行した虫歯や歯周病の治療、歯を失った後の補綴治療には、数万円から数十万円かかることもあります。
全身の健康との関連
口腔の健康は、全身の健康と密接に関連しています。歯周病は糖尿病、心臓病、脳梗塞、誤嚥性肺炎などのリスクを高めることが明らかになっています。予防歯科により口腔の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながります。
予防歯科の具体的な内容
予防歯科は、歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」と、自宅で行う「セルフケア」の両方が重要です。
プロフェッショナルケア
定期検診
3ヶ月から6ヶ月に1回、歯科医院で口腔内の状態をチェックします。虫歯や歯周病の有無、歯茎の状態、噛み合わせなどを専門家の目で確認します。初期の問題を早期発見できます。
プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
専門的な器具と技術により、歯ブラシでは除去できない歯石やバイオフィルムを除去します。歯の表面を研磨し、ツルツルに仕上げることで、汚れが付きにくくなります。
フッ素塗布
高濃度のフッ素を歯に塗布することで、歯質を強化し、虫歯を予防します。特に子どもや虫歯のリスクが高い方に効果的です。
ブラッシング指導
一人ひとりの口腔内の状態や磨き癖に応じて、正しいブラッシング方法を指導します。磨き残しやすい部分を把握し、効果的なケア方法を学べます。
生活習慣のアドバイス
食生活、間食の取り方、喫煙、ストレス管理など、口腔の健康に影響する生活習慣についてアドバイスします。
セルフケア
毎日の丁寧な歯磨き
1日2回以上、特に就寝前は必ず歯を磨きましょう。1回3分程度、丁寧に磨きます。歯ブラシは毛先が開いたら交換し、フッ素入り歯磨き粉を使用します。
デンタルフロスや歯間ブラシの使用
歯と歯の間は歯ブラシだけでは磨けません。1日1回、就寝前にデンタルフロスや歯間ブラシを使用しましょう。
食生活の改善
糖分の摂取を控える、だらだら食べを避ける、バランスの良い食事を心がけるなど、食生活を見直しましょう。
禁煙
タバコは歯周病の最大のリスク要因です。禁煙することで、口腔の健康だけでなく、全身の健康も改善されます。
定期的なセルフチェック
鏡で自分の歯や歯茎を観察し、変化に気づく習慣をつけましょう。
予防歯科のメリット
虫歯・歯周病の予防
最も重要なメリットです。定期的なケアにより、虫歯や歯周病を防ぎ、健康な歯を維持できます。
早期発見・早期治療
万が一問題が発生しても、初期段階で発見できるため、簡単な治療で済みます。
歯の寿命が延びる
適切な予防により、生涯にわたって自分の歯を維持できる可能性が高まります。80歳で20本以上の歯を残す8020運動の達成にもつながります。
治療費の節約
定期検診とクリーニングの費用は、治療費に比べて圧倒的に安価です。長期的に見れば、大きな節約になります。
時間の節約
簡単な処置で済むため、治療にかかる時間を大幅に削減できます。
痛みを経験しない
痛みが出る前に対処できるため、苦痛を避けられます。
全身の健康維持
口腔の健康を保つことで、全身の健康リスクも低減できます。
生活の質の向上
健康な歯で食事を楽しみ、自信を持って笑い、会話を楽しむことができます。人生の質が向上します。
審美性の維持
定期的なクリーニングにより、着色汚れを除去し、美しい歯を維持できます。
日本と海外の予防歯科の違い
スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国では、予防歯科が非常に進んでいます。これらの国では、国民の80%から90%が定期的に歯科検診を受けており、80歳での平均残存歯数は20本以上です。
一方、日本では、定期的に歯科検診を受けている人は約50%程度にとどまっており、80歳での平均残存歯数は15本程度です。まだまだ「痛くなったら行く」という意識が根強く残っています。
しかし、近年は日本でも予防歯科の重要性が認識され始め、定期検診を受ける方が増えてきています。
予防歯科を実践するために
かかりつけ歯科医を持つ
信頼できるかかりつけ歯科医を持ち、継続して通うことが重要です。同じ歯科医師が経過を追って診てくれることで、わずかな変化にも気づいてもらえます。
定期検診を習慣化する
次回の予約をその場で取る、リコールシステムを活用するなどして、定期検診を習慣化しましょう。
正しい知識を持つ
予防歯科や口腔ケアについての正しい知識を持つことが大切です。歯科医師や歯科衛生士に積極的に質問し、学びましょう。
家族みんなで実践
予防歯科は、子どもの頃から始めることが理想的です。家族みんなで定期検診を受け、正しいケアを実践しましょう。
意識を変える
「痛くなったら行く」から「痛くならないために行く」へ、意識を変えることが最も重要です。
子どもの予防歯科
子どもの頃から予防歯科を実践することで、生涯にわたる口腔の健康の基盤が作られます。乳歯が生え始めたら、定期検診を開始しましょう。フッ素塗布、シーラント(奥歯の溝を埋める予防処置)、正しいブラッシング習慣の確立など、子どもに合わせた予防プログラムがあります。
高齢者の予防歯科
高齢になっても、予防歯科は重要です。歯周病のリスクが高まる、唾液の分泌が減少する、持病の薬の副作用で口が乾くなど、様々な問題が生じやすくなります。定期的なケアにより、残存歯を守り、入れ歯のメンテナンスも行います。健康な口腔機能を維持することで、全身の健康やQOLの維持につながります。
まとめ
予防歯科は、虫歯や歯周病を未然に防ぎ、生涯にわたって健康な歯を維持するための重要なアプローチです。歯は再生せず、治療には限界があるため、予防こそが最善の治療です。定期検診とクリーニング、フッ素塗布、ブラッシング指導などのプロフェッショナルケアと、毎日の丁寧な歯磨き、フロスの使用、食生活の改善などのセルフケアの両方が重要です。予防歯科により、虫歯や歯周病を防ぎ、早期発見・早期治療ができ、歯の寿命が延び、治療費と時間を節約でき、痛みを経験せず、全身の健康を維持でき、生活の質が向上します。かかりつけ歯科医を持ち、定期検診を習慣化し、「痛くならないために行く」という意識を持ちましょう。予防歯科は、人生の質を守る投資です。今日から実践を始めましょう。
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