はじめに
「しっかり磨こう」という意識が強すぎて、つい力を入れて歯を磨いていませんか。実は、力を入れすぎた歯磨きは、歯や歯茎に深刻なダメージを与える原因になります。「汚れをしっかり落としたい」という気持ちは理解できますが、強く磨けば磨くほどきれいになるわけではありません。むしろ、歯の表面を削り、歯茎を傷つけ、知覚過敏などの様々なトラブルを引き起こします。本記事では、なぜ力を入れすぎると歯が削れるのか、そのメカニズムと正しいブラッシング方法について詳しく解説します。
歯が削れるメカニズム
歯の構造と硬さ
歯の表面はエナメル質という、人体の中で最も硬い組織で覆われています。エナメル質の硬度は、モース硬度で6~7程度あり、鉄よりも硬いとされています。
しかし、どんなに硬いエナメル質でも、日々の過度な摩擦によって徐々に削られていきます。特に、歯ブラシの毛先と歯磨き粉に含まれる研磨剤による機械的な摩擦は、長期間にわたって蓄積すると、目に見える形で歯を摩耗させます。
歯頸部は特に削れやすい
歯の根元に近い部分(歯頸部)は、エナメル質が薄くなっており、その下の象牙質が露出しやすい部分です。象牙質はエナメル質よりもはるかに柔らかいため、力を入れた歯磨きによって容易に削られてしまいます。
この部分が削れると、くさび状の欠損(楔状欠損)ができます。これは、力を入れすぎたブラッシングの典型的な症状です。
研磨剤の影響
歯磨き粉に含まれる研磨剤は、歯の表面の着色汚れを落とす働きがありますが、強い力で磨くと、この研磨剤が歯を削る「やすり」のような役割を果たしてしまいます。
研磨剤の粒子が粗い歯磨き粉を使用し、さらに強い力で磨くと、歯の摩耗は加速します。特に、ホワイトニング効果を謳う歯磨き粉には研磨剤が多く含まれている場合があるため、注意が必要です。
力を入れすぎることで起こる問題
歯の摩耗と知覚過敏
力を入れすぎた歯磨きによって歯が削れると、最も深刻な問題の一つが知覚過敏です。エナメル質が薄くなったり、象牙質が露出したりすると、冷たいものや甘いもの、酸っぱいものが歯にしみるようになります。
象牙質には象牙細管という細い管が無数に走っており、これが神経につながっています。象牙質が露出すると、外部からの刺激が直接神経に伝わり、鋭い痛みを感じるのです。
歯茎の退縮
強い力で磨くと、歯茎も傷つきます。繰り返しの刺激により、歯茎が徐々に下がっていく「歯肉退縮」が起こります。歯茎が下がると、本来歯茎に守られていた歯根が露出し、見た目が悪くなるだけでなく、知覚過敏の原因にもなります。
一度退縮した歯茎は、自然に元の位置に戻ることはありません。重度の場合は、歯茎の移植手術などが必要になることもあります。
楔状欠損
歯の根元部分が削れて、くさび形の溝ができる状態を楔状欠損と言います。これは、力を入れすぎた横磨きによって典型的に見られる症状です。
特に、犬歯や小臼歯の歯頸部に多く発生します。浅い場合は経過観察ですが、深くなると神経に近づき、痛みが出たり、神経の治療が必要になったりすることもあります。
歯の表面の粗造化
強い力で磨き続けると、歯の表面が傷だらけになり、粗くなります。表面が粗いと、かえってプラークや着色が付着しやすくなるという悪循環が生まれます。
また、歯の光沢が失われ、見た目も悪くなります。
歯ブラシの早期劣化
力を入れすぎて磨いていると、歯ブラシの毛先がすぐに広がってしまいます。毛先が広がった歯ブラシは清掃効果が著しく低下し、磨き残しの原因になります。
通常、歯ブラシは1ヶ月で交換が推奨されていますが、力を入れすぎる方は2週間程度で交換が必要になることもあります。
適切なブラッシング圧とは
推奨される力加減
適切なブラッシング圧は、約150~200グラム程度と言われています。これは、キッチンスケールに歯ブラシを当てて押したときに、150~200グラムを示す程度の力です。
実際には計測しながら磨くわけではないので、感覚を掴むことが重要です。歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力が目安です。
自分の力加減をチェックする方法
自分が力を入れすぎているかどうかを確認する簡単な方法があります。
まず、新しい歯ブラシを使い始めてから、どれくらいの期間で毛先が広がるかを観察します。2週間程度で明らかに毛先が広がる場合は、力を入れすぎている可能性が高いです。
また、鏡の前で歯を磨きながら、歯ブラシの毛先がどれくらい潰れているかを見てみましょう。毛先が大きく広がって潰れている場合は、力が強すぎます。
持ち方を変える
歯ブラシの持ち方を変えることで、力加減をコントロールしやすくなります。握りしめるように持つ「パームグリップ」ではなく、鉛筆を持つように持つ「ペングリップ」が推奨されています。
ペングリップで持つと、自然と力が入りにくくなり、細かい動きもしやすくなります。最初は違和感があるかもしれませんが、慣れると快適に磨けるようになります。
正しいブラッシング方法
やわらかめの歯ブラシを選ぶ
力を入れすぎる癖がある方は、やわらかめの歯ブラシを選びましょう。硬い毛の歯ブラシは、同じ力でもより歯や歯茎を傷つけやすくなります。
ただし、やわらかすぎても清掃効果が低下するため、「ふつう」または「やわらかめ」を選び、適切な力加減で使用することが大切です。
小刻みな動きで磨く
大きく横に動かすのではなく、1~2本ずつ小刻みに動かして磨きます。大きく動かすと力が入りやすく、また磨き残しも増えます。
歯ブラシの毛先を歯面に垂直または45度の角度で当て、小刻みに振動させるように動かします。この方法なら、少ない力で効率的にプラークを除去できます。
時間をかけて丁寧に
急いで磨こうとすると、つい力が入ってしまいます。最低3分、できれば5分程度の時間をかけて、ゆっくり丁寧に磨きましょう。
焦らず、リラックスして磨くことが、適切な力加減につながります。
低研磨の歯磨き粉を選ぶ
力を入れすぎる傾向がある方は、研磨剤の配合量が少ない、または研磨剤無配合の歯磨き粉を選ぶことをおすすめします。
特に、知覚過敏用の歯磨き粉は研磨剤が少なく、歯に優しい設計になっています。
電動歯ブラシの活用
力加減の自動調整
電動歯ブラシの多くには、圧力センサーが搭載されており、力を入れすぎると警告してくれたり、自動的に振動が止まったりする機能があります。
力加減のコントロールが難しい方には、電動歯ブラシの使用も一つの解決策です。ただし、電動歯ブラシでも押し付けすぎると歯を傷めるため、軽く当てるだけという使い方を守る必要があります。
正しい使い方
電動歯ブラシは、手磨きのように動かす必要はありません。各歯面にゆっくりと当てていくだけで、自動的に汚れを落としてくれます。
押し付けずに、軽く触れる程度で使用することが重要です。
すでに歯が削れている場合の対処法
歯科医院での診断
歯が削れていると感じたら、まず歯科医院を受診しましょう。削れた部分の程度によって、適切な処置が異なります。
軽度であれば、ブラッシング指導と経過観察で済むこともあります。中等度以上の場合は、詰め物をしたり、知覚過敏の処置をしたりする必要があります。
知覚過敏の治療
知覚過敏がある場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を継続的に使用することで症状が改善することがあります。また、歯科医院で知覚過敏抑制剤を塗布してもらう治療も効果的です。
ブラッシング方法の改善
最も重要なのは、これ以上削れないように、ブラッシング方法を改善することです。歯科衛生士から正しい磨き方を教わり、定期的にチェックしてもらいましょう。
まとめ
力を入れすぎた歯磨きは、歯の表面のエナメル質を削り、歯茎を傷つけ、知覚過敏や歯肉退縮、楔状欠損などの様々な問題を引き起こします。適切なブラッシング圧は150~200グラム程度で、歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力が目安です。
ペングリップで歯ブラシを持ち、小刻みな動きで丁寧に磨くことで、少ない力で効果的にプラークを除去できます。やわらかめの歯ブラシと低研磨の歯磨き粉を選ぶことも、歯を守るために有効です。
「しっかり磨く」とは「強く磨く」ことではありません。正しい方法で、適切な力加減で、時間をかけて丁寧に磨くことが、歯と歯茎を長く健康に保つ秘訣です。力を抜いて、優しく磨きましょう。
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