更年期と歯ぐきのトラブル|ホルモン変化が口の健康に与える影響と対策

はじめに
更年期を迎えると、ほてりや発汗、イライラ、不眠など、さまざまな体の変化に悩まされる女性は多いでしょう。しかし、更年期の影響は体だけでなく、実は口の中、特に歯ぐきにも大きく現れることをご存知でしょうか。
「最近、歯茎が腫れやすくなった」「歯磨きで出血する」「口の中が乾く」といった症状は、実は更年期によるホルモンバランスの変化が原因かもしれません。更年期の女性の多くが、何らかの歯ぐきのトラブルを経験しているのです。
この記事では、更年期と歯ぐきのトラブルの関係について詳しく解説し、この時期を健やかに過ごすための具体的な対策をご紹介します。
更年期とは
更年期の基礎知識
更年期とは、女性の閉経前後の約10年間を指します。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳前後とされており、一般的には45歳から55歳頃が更年期にあたります。この時期、卵巣機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。
エストロゲンの減少により、自律神経のバランスが乱れ、さまざまな心身の不調が現れます。これらの症状を総称して「更年期症状」と呼び、日常生活に支障をきたすほど重い場合は「更年期障害」と診断されます。
更年期の代表的な症状
更年期の症状は人によって異なりますが、代表的なものとして、ほてり、のぼせ、発汗、動悸、めまい、頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、イライラ、不安、不眠、憂うつ感などがあります。これらの症状は、個人差が大きく、ほとんど感じない人もいれば、日常生活が困難になるほど重症な人もいます。
エストロゲンと口腔の健康
エストロゲンの役割
エストロゲンは、女性らしい体を作るだけでなく、全身のさまざまな組織の健康維持に関わっています。骨の健康を保つ、血管を柔軟に保つ、コラーゲンの生成を促進する、粘膜を保護するといった重要な働きがあります。
口腔内においても、エストロゲンは歯ぐきの健康維持に欠かせません。歯ぐきの粘膜を保護し、コラーゲンの生成を助け、組織の修復を促進する働きがあります。また、唾液の分泌にも影響を与えています。
エストロゲン減少による影響
更年期にエストロゲンが減少すると、これらの保護機能が低下します。その結果、歯ぐきが炎症を起こしやすくなり、組織の修復力も弱まります。また、骨密度の低下により、歯を支える顎の骨も弱くなる可能性があります。
更年期に起こりやすい歯ぐきのトラブル
歯肉炎・歯周病の悪化
更年期には、歯肉炎や歯周病が悪化しやすくなります。エストロゲンの減少により、歯ぐきの抵抗力が低下し、細菌感染に対する防御機能が弱まるためです。これまで問題がなかった人でも、突然歯ぐきが腫れたり出血したりすることがあります。
また、更年期前から軽度の歯周病があった人は、症状が急速に進行する可能性があります。歯ぐきの腫れ、出血、歯と歯茎の間の溝が深くなる、歯がぐらつくといった症状が現れたら、早めに歯科医院を受診しましょう。
ドライマウス(口腔乾燥症)
更年期の女性に非常に多いのが、口の中の乾燥です。エストロゲンの減少により唾液の分泌量が減少し、口の中が常に乾いた状態になります。唾液には、口の中を洗浄する、細菌の増殖を抑える、歯の再石灰化を助けるといった重要な働きがあります。
唾液が減少すると、これらの防御機能が低下し、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、口臭、味覚の変化、口の中のヒリヒリ感、食べ物が飲み込みにくいといった症状も現れます。
バーニングマウス症候群
更年期に特徴的な症状の一つが、「バーニングマウス症候群」です。これは、口の中、特に舌や歯ぐき、口蓋などに、やけどをしたようなヒリヒリ感や灼熱感を感じる症状です。
見た目には異常がないのに、痛みや不快感が続くのが特徴で、エストロゲンの減少やストレス、自律神経の乱れなどが関係していると考えられています。この症状は、食事中は軽減し、夕方から夜にかけて悪化する傾向があります。
歯ぐきの変色や腫れ
更年期には、歯ぐきの色が変わったり、部分的に腫れたりすることがあります。これは、ホルモンバランスの変化により、歯ぐきの血流や組織の状態が変化するためです。特に、月経があった頃の月経前のような歯ぐきの不快感を感じる人もいます。
味覚の変化
エストロゲンの減少や唾液分泌の低下により、味覚が変化することもあります。食べ物の味が薄く感じられたり、金属的な味がしたり、苦みを強く感じたりすることがあります。これらの変化は、食事の楽しみを減らし、栄養バランスの偏りにもつながる可能性があります。
更年期の歯ぐきトラブルへの対策
口腔ケアの徹底
更年期こそ、これまで以上に丁寧な口腔ケアが必要です。1日3回、特に就寝前の歯磨きは念入りに行いましょう。歯ブラシは柔らかめのものを選び、歯ぐきを傷つけないよう優しく磨きます。
歯と歯茎の境目を重点的に磨き、歯周ポケットの汚れを取り除くことが重要です。デンタルフロスや歯間ブラシも必ず使用し、歯と歯の間の汚れもしっかり除去しましょう。
ドライマウス対策
口の乾燥を防ぐために、こまめな水分補給を心がけましょう。一日に1.5リットルから2リットルの水を、少量ずつ頻繁に飲むのが理想的です。キシリトールガムを噛むことで、唾液の分泌を促すこともできます。
保湿ジェルやマウススプレーなど、口腔保湿剤を使用するのも効果的です。また、加湿器を使って室内の湿度を保つことも、口の乾燥予防に役立ちます。アルコールを含むマウスウォッシュは口を乾燥させるため、ノンアルコールタイプを選びましょう。
唾液腺マッサージ
唾液の分泌を促すために、唾液腺マッサージを習慣にしましょう。耳の下から顎のラインに沿って、指で優しく円を描くようにマッサージします。食前やテレビを見ながらなど、気づいた時に行うと良いでしょう。
定期的な歯科検診
更年期は、3ヶ月に1回程度、定期的に歯科検診を受けることをおすすめします。歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の進行をチェックしてもらいましょう。プロフェッショナルクリーニングで歯石を除去することも、歯ぐきの健康維持に欠かせません。
更年期であることを歯科医師に伝えることで、ホルモン変化に配慮した治療やアドバイスを受けることができます。
栄養バランスの改善
骨や歯ぐきの健康を保つために、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。特に重要なのは、カルシウム、ビタミンD、タンパク質です。乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などを積極的に摂取しましょう。
また、ビタミンCはコラーゲンの生成に必要で、歯ぐきの健康維持に役立ちます。果物や野菜から十分に摂取するよう心がけてください。
ストレス管理と生活習慣
ストレスは、更年期症状を悪化させ、歯ぐきの健康にも悪影響を及ぼします。適度な運動、趣味の時間、十分な睡眠など、リラックスできる時間を大切にしましょう。ヨガや瞑想、深呼吸なども、自律神経を整えるのに効果的です。
禁煙も重要です。喫煙は歯周病のリスクを大幅に高めるだけでなく、更年期症状も悪化させます。
ホルモン補充療法の検討
更年期症状が重い場合は、婦人科でホルモン補充療法(HRT)を相談するのも一つの選択肢です。HRTにより、更年期症状が軽減されるだけでなく、口腔内の症状も改善する可能性があります。
ただし、HRTには適応条件や副作用もあるため、必ず専門医とよく相談して決めましょう。
医科歯科連携の重要性
更年期の口腔トラブルは、ホルモン変化という全身的な問題が背景にあります。そのため、婦人科と歯科が連携して治療にあたることが理想的です。婦人科で更年期の診断を受けている場合は、そのことを歯科医師に伝え、歯科での症状についても婦人科医に相談しましょう。
お薬手帳を活用して、服用している薬の情報を共有することも大切です。
まとめ
更年期は、女性の体に大きな変化が起こる時期であり、その影響は口の中、特に歯ぐきにも及びます。エストロゲンの減少により、歯周病が悪化しやすくなったり、口が乾燥したり、歯ぐきにヒリヒリ感を感じたりと、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。
しかし、適切な口腔ケア、こまめな水分補給、栄養バランスの取れた食事、ストレス管理、定期的な歯科検診といった対策により、これらのトラブルを予防・改善することができます。更年期だからと諦めずに、積極的にケアを行いましょう。
更年期の体の変化は自然なことですが、口の健康を守ることで、生活の質を保ち、その後の人生をより健康に過ごすことができます。気になる症状があれば、遠慮せずに歯科医師や婦人科医に相談し、適切なサポートを受けながら、この時期を乗り越えていきましょう。
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