
はじめに
歯周病の治療が終わったとき、「これで終わり」と安心していませんか。実は、歯周病治療において最も重要なのは、治療後のメンテナンスです。歯周病は慢性疾患であり、糖尿病や高血圧と同じように、継続的な管理が必要な病気です。治療によって改善した状態も、メンテナンスを怠ると再発しやすく、元の状態に戻ってしまうことも珍しくありません。実際、歯周病治療後にメンテナンスを受けている人と受けていない人では、10年後の歯の残存率に大きな差が出ることが研究で明らかになっています。メンテナンスを継続することで、一生自分の歯で食事を楽しめる可能性が大幅に高まります。本記事では、なぜメンテナンスが重要なのか、その理由を詳しく解説します。
歯周病は再発しやすい病気
歯周病治療の最大の課題は、再発率の高さです。
細菌は完全には除去できない
歯周病の原因は、口の中の細菌です。治療によって細菌の数を大幅に減らすことはできますが、完全にゼロにすることは不可能です。
治療後も、口の中には常に細菌が存在し、時間とともに再び増殖していきます。特に歯周病菌は、一度感染すると完全に排除することが難しい性質があります。
プラークは毎日蓄積する
どんなに丁寧に歯を磨いても、完璧に汚れを落とすことはできません。磨き残しがあれば、そこにプラーク(歯垢)が蓄積し、24時間から48時間で歯石になり始めます。
歯石は歯ブラシでは取り除けないため、定期的に歯科医院で除去する必要があります。
一度失われた組織は完全には戻らない
歯周病によって失われた歯を支える骨や歯茎は、基本的には元通りには戻りません。治療によって炎症は治まりますが、組織の構造的な弱さは残ります。
そのため、再び歯周病菌が増殖すると、以前より早く悪化する可能性があります。
生活習慣の影響
歯周病は、生活習慣病の側面もあります。食生活、ストレス、喫煙、睡眠不足などの生活習慣が悪化すると、免疫力が低下し、歯周病が再発しやすくなります。
メンテナンスを受けないとどうなるか
メンテナンスを受けずにいると、どのような問題が起こるのでしょうか。
歯周病の再発
最も起こりやすいのが、歯周病の再発です。せっかく治療で改善した歯茎の状態が、再び悪化していきます。
研究によると、メンテナンスを受けていない人の約4割から6割が、数年以内に歯周病が再発すると報告されています。
症状に気づきにくい
歯周病は「静かな病気」と呼ばれ、初期から中期にかけては自覚症状が少ないのが特徴です。痛みがないため、再発していても気づかず、気づいたときには重症化していることがあります。
定期的なメンテナンスを受けていれば、患者さん自身が気づく前に、専門家が早期発見できます。
歯を失うリスクの増加
歯周病が再発し、進行すると、最終的には歯を失うことになります。日本人が歯を失う最大の原因は歯周病です。
メンテナンスを受けている人と受けていない人では、10年後の歯の残存本数に平均で数本の差が出るという研究結果もあります。
治療費と時間の無駄
再発すると、また一から治療をやり直す必要があり、時間も費用もかかります。定期的なメンテナンスを受ける方が、長期的には時間的にも経済的にも負担が少なくて済みます。
メンテナンスの具体的な内容
歯周病のメンテナンスでは、どのようなことが行われるのでしょうか。
歯周ポケットの測定
専用の器具を使って、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さを測定します。ポケットが深くなっていれば、歯周病が再発している可能性があります。
また、出血の有無も確認します。歯茎からの出血は、炎症があることを示すサインです。
プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
歯科衛生士が専用の器具を使って、自分では取り切れない歯石やプラーク、着色汚れを除去します。
特に歯と歯の間、歯と歯茎の境目、奥歯の裏側など、磨き残しが多い部分を重点的にクリーニングします。
歯の表面を滑らかに磨き上げることで、プラークが付きにくい状態にします。
スケーリング(歯石除去)
歯石が付着している場合は、専用の器具で除去します。歯石は細菌の温床となるため、定期的に除去することが重要です。
ブラッシング指導
毎回のメンテナンスで、磨き残しがある部分をチェックし、改善のためのアドバイスを受けられます。生活習慣や歯並びの変化に応じて、最適な磨き方は変わるため、継続的な指導が大切です。
口腔内写真やレントゲン撮影
定期的に口の中の写真を撮影したり、レントゲンを撮ったりすることで、経時的な変化を客観的に記録できます。
骨の状態や、虫歯の有無なども確認します。
生活習慣の指導
食生活、喫煙、ストレスなど、歯周病に影響する生活習慣についてもアドバイスを受けられます。
メンテナンスの頻度
メンテナンスは、どのくらいの頻度で受ければよいのでしょうか。
基本は3ヶ月から6ヶ月に1回
一般的には、3ヶ月から6ヶ月に1回のメンテナンスが推奨されます。これは、プラークが歯石になり、歯周病が再発し始めるまでの期間を考慮した頻度です。
個人差がある
ただし、最適な頻度は人によって異なります。歯周病の重症度、口腔ケアの状態、全身の健康状態、生活習慣などによって調整されます。
重度の歯周病だった方や、再発リスクが高い方は、1ヶ月から2ヶ月に1回のメンテナンスが必要なこともあります。
逆に、軽度で安定している方は、6ヶ月に1回でも十分な場合があります。
歯科医師・歯科衛生士と相談
自分に最適な頻度については、担当の歯科医師や歯科衛生士と相談して決めましょう。
メンテナンスの効果を示すデータ
メンテナンスの重要性は、科学的にも証明されています。
歯の残存率の違い
スウェーデンで行われた長期研究では、定期的にメンテナンスを受けた人は、30年後でも平均25本以上の歯を保っていたのに対し、メンテナンスを受けなかった人は平均10本以下しか残っていませんでした。
日本でも同様の研究があり、80歳で20本以上の歯を残している人の多くが、定期的なメンテナンスを受けていることが分かっています。
再発率の違い
メンテナンスを受けている人の歯周病再発率は約10パーセントから20パーセント程度ですが、受けていない人は40パーセントから60パーセント以上と報告されています。
全身の健康への影響
定期的なメンテナンスを受けることで、口腔内だけでなく、全身の健康状態も良好に保てることが分かっています。歯周病と関連する糖尿病や心疾患のリスクも低減します。
メンテナンスを継続するコツ
メンテナンスの重要性は分かっていても、継続するのは簡単ではありません。
予約を習慣化する
メンテナンスが終わったら、その場で次回の予約を取ってしまいましょう。日程が決まっていれば、忘れにくくなります。
多くの歯科医院では、予約日が近づくとリマインドの連絡をくれます。
同じ曜日や時間帯で予約
毎回同じ曜日の同じ時間帯で予約すると、生活リズムに組み込みやすくなります。
かかりつけ医を持つ
いつも同じ歯科医院、同じ歯科衛生士に診てもらうことで、口の中の変化を継続的に把握してもらえます。また、信頼関係が築かれ、通院のモチベーションも保ちやすくなります。
健康への投資と考える
メンテナンスの費用を「もったいない」と思うのではなく、将来の健康への投資と考えましょう。歯を失ってインプラントや入れ歯にすれば、何倍もの費用がかかります。
メンテナンスと日々のセルフケアの両立
メンテナンスを受けていれば安心というわけではありません。毎日のセルフケアも同様に重要です。
プロフェッショナルケアとセルフケアの両輪があって、初めて歯周病を予防できます。メンテナンスで学んだ正しい歯磨き方法を、毎日実践することが大切です。
どんなに優れたメンテナンスを受けても、毎日のケアが不十分では効果が半減してしまいます。
メンテナンスを受けられない場合
どうしても定期的に歯科医院に通えない場合でも、できる範囲でセルフケアを徹底し、少なくとも年に1回は検診を受けるようにしましょう。
また、歯茎からの出血、腫れ、口臭、歯のグラつきなど、異常を感じたらすぐに受診することが大切です。
まとめ
歯周病治療のメンテナンスが重要な理由は、歯周病が再発しやすい病気であり、メンテナンスなしでは高確率で再発するためです。定期的なメンテナンスを受けている人と受けていない人では、10年後、20年後の歯の残存本数に大きな差が出ます。メンテナンスでは、歯周ポケットの測定、プロフェッショナルクリーニング、歯石除去、ブラッシング指導などが行われます。頻度は3ヶ月から6ヶ月に1回が基本ですが、個人差があります。メンテナンスは一生涯続ける必要がありますが、これが自分の歯を守る最良の方法です。治療が終わっても通院をやめず、定期的なメンテナンスを習慣にしましょう。
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