はじめに
「舌のトレーニングで歯並びが良くなる」という話を聞いたことがあるでしょうか。一見すると信じがたい話に聞こえるかもしれませんが、実は舌の位置や動きは歯並びに大きな影響を与えています。特に成長期の子どもにおいては、舌の正しい使い方を身につけることで、歯並びの悪化を予防したり、改善したりすることが可能です。この記事では、舌と歯並びの関係、そして舌トレーニングの効果と具体的な方法について詳しく解説していきます。
舌と歯並びの深い関係
舌の正しい位置とは
多くの方は、普段自分の舌がどこにあるか意識していないかもしれません。実は、舌には「正しい位置」が存在します。リラックスしているときや口を閉じているとき、舌の先端は上の前歯の裏側の歯茎に軽く触れ、舌全体が上顎に接触している状態が理想的です。
この位置を保つことで、舌は上顎を内側から適度に押し、顎の正常な成長を促します。また、正しい舌の位置は鼻呼吸を促し、口腔周囲筋のバランスを整える役割も果たしています。
舌の悪習癖が歯並びに与える影響
舌の位置や動きに問題があると、歯並びに悪影響を及ぼします。代表的な問題として、低位舌、舌突出癖、舌癖などがあります。
低位舌とは、舌が常に下がった位置にある状態です。口呼吸をしている人に多く見られ、舌が上顎に接触していないため、上顎の成長が不十分になります。その結果、上顎が狭くなり、歯が並ぶスペースが不足して叢生(ガタガタの歯並び)が生じやすくなります。
舌突出癖は、飲み込む際や話す際に舌を前方に突き出す癖です。舌が前歯を押すことで、前歯が前方に突出し、上顎前突(出っ歯)や開咬(前歯が噛み合わない状態)を引き起こします。また、常に舌を歯と歯の間に挟む癖がある場合も、同様の問題が生じます。
舌が歯並びに与える力
舌は強力な筋肉の塊です。舌が歯に与える力は、咀嚼時の力よりも持続的で、歯の位置に大きな影響を与えます。正しい位置にある舌は、上顎を内側から押して適切な成長を促しますが、誤った位置や動きの舌は、歯を不適切な方向に押し続け、歯並びを悪化させます。
興味深いことに、矯正治療で一度歯並びを整えても、舌の悪習癖が残っていると、治療後に歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こりやすくなります。このため、矯正治療と並行して舌のトレーニングを行うことが推奨されています。
舌トレーニング(口腔筋機能療法・MFT)とは
舌トレーニングは、正式には「口腔筋機能療法(Oral Myofunctional Therapy、略してMFT)」と呼ばれます。舌、唇、頬などの口腔周囲筋の機能を改善し、正しい筋肉の使い方を習得するためのトレーニングです。
MFTの目的は、舌の正しい位置を習得し、正しい嚥下パターンを身につけ、口唇を閉じる力を強化し、鼻呼吸を促進することです。これにより、歯並びの悪化を予防したり、矯正治療の効果を高めたり、治療後の後戻りを防いだりすることができます。
舌トレーニングで歯並びが整う可能性
予防効果
舌トレーニングには、歯並びの悪化を予防する効果が期待できます。特に成長期の子どもにおいて、早期に舌の正しい使い方を身につけることで、顎の適切な発育を促し、歯が正しく並ぶための土台を作ることができます。
舌の悪習癖による歯並びの悪化を未然に防ぐことができれば、将来的に矯正治療が不要になったり、必要になっても軽度の治療で済んだりする可能性が高まります。
軽度の不正咬合の改善
舌の悪習癖が主な原因となっている軽度の不正咬合であれば、舌トレーニングだけで改善することがあります。特に乳歯列期や混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)の子どもでは、舌の位置を正すことで、自然に歯並びが改善されるケースも報告されています。
ただし、すべての歯並びの問題が舌トレーニングだけで解決できるわけではありません。重度の叢生や骨格的な問題がある場合は、矯正治療が必要になります。
矯正治療の効果を高める
矯正治療中に舌トレーニングを併用することで、治療効果が高まります。舌の悪習癖を改善することで、矯正装置が歯を正しい位置に動かす妨げとなる力を取り除くことができます。
また、治療後の後戻りを防ぐためにも、舌トレーニングは重要です。せっかく矯正治療できれいに並べた歯も、舌の悪習癖が残っていると、再び元の位置に戻ろうとします。舌の正しい使い方を習得することで、治療結果を長期的に維持できます。
具体的な舌トレーニングの方法
スポットポジションの習得
舌の正しい位置である「スポットポジション」を習得することが、すべての基本となります。上の前歯の裏側、歯茎に近い部分に舌の先端を当て、舌全体を上顎に軽く接触させます。
この位置を意識的に保つ練習を、1日に何度も繰り返します。最初は数秒しか保てなくても、徐々に時間を延ばしていきます。最終的には、無意識にこの位置を保てるようになることが目標です。
ポッピング
舌全体を上顎に吸い付けてから、勢いよく下に引き離す運動です。「ポンッ」という音がするのが正解です。このトレーニングにより、舌を上顎に持ち上げる筋肉が鍛えられます。
1日に20回程度、3セット行うのが目安です。舌小帯が短い場合は、この運動が難しいことがあります。その場合は、歯科医師に相談しましょう。
スポットスワロー(正しい嚥下の練習)
飲み込む際に舌を正しい位置に保つ練習です。舌をスポットポジションに置いた状態で、唾液や水を飲み込みます。このとき、舌が前歯を押したり、前方に突き出したりしないよう注意します。
最初は鏡を見ながら行い、唇や顎が動いていないか確認します。正しい嚥下では、舌だけが動き、唇や顎はほとんど動きません。
あいうべ体操
口を大きく開けて「あー」「いー」「うー」「べー」と発音する体操です。口腔周囲筋全体を鍛え、口唇を閉じる力を強化します。
1日30回を目安に行います。特に「べー」では舌を思い切り前方に突き出すことで、舌の可動域が広がります。
ボタンプル
ボタンと糸を使ったトレーニングです。ボタンを唇と歯の間に挟み、糸を引っ張ることで、口唇を閉じる力を鍛えます。口呼吸の改善にも効果的です。
糸を前方に引っ張りながら、3分間ボタンを口で保持します。これを1日2〜3回行います。
舌トレーニングの注意点
舌トレーニングは、継続することが最も重要です。数日や数週間で効果が出るものではなく、数ヶ月から年単位で続ける必要があります。毎日コツコツと続けることで、徐々に正しい舌の位置や動きが習慣化されます。
また、自己流で行うのではなく、歯科医師や歯科衛生士の指導の下で行うことが望ましいです。誤った方法でトレーニングを続けると、かえって問題が悪化することもあります。
さらに、舌トレーニングだけですべての歯並びの問題が解決できるわけではありません。重度の不正咬合や骨格的な問題がある場合は、矯正治療が必要です。歯科医師に相談し、自分の状態に合った治療法を選択することが大切です。
いつから始めるべきか
舌トレーニングは、早ければ早いほど効果的です。理想的には、3歳から4歳頃、言葉を理解し、指示に従える年齢になったら始めることが推奨されます。
この時期から正しい舌の使い方を身につけることで、顎の適切な発育を促し、永久歯がきれいに並ぶための土台を作ることができます。ただし、大人になってからでも遅くはありません。矯正治療と併用したり、治療後の後戻り防止のために行ったりすることで、十分な効果が期待できます。
まとめ
舌は歯並びに大きな影響を与えています。舌の正しい位置と動きを身につける舌トレーニング(MFT)により、歯並びの悪化を予防したり、軽度の不正咬合を改善したり、矯正治療の効果を高めたりすることができます。
特に成長期の子どもにとって、早期に舌トレーニングを始めることは、将来の歯並びを守る上で非常に有効です。ただし、継続が重要であり、専門家の指導の下で行うことが望ましいです。
歯並びが気になる方、お子さんの歯並びが心配な方は、まず歯科医師に相談し、舌の状態をチェックしてもらうことをお勧めします。舌トレーニングが必要かどうか、どのような方法が適しているかを判断してもらい、適切な指導を受けましょう。
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